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「っな!!」
突然生じた炎はラフェルとティエラを囲う。
炎の壁の向こう側で、メイザス伯爵が嘲笑っている。
「・・・メイザス伯爵ッ!!」
「殿下。
非常に残念です。
貴女を献上すれば、私は国内で大きな力を持てるのに・・・。
本当に残念だ」
冷酷な言葉に、ティエラの瞳が音を立てて凍り付く。
ラフェルは徐々に息を乱しながら、口元に冷笑を浮かべる。
「・・・父が、あの男が、そう言ったのか?
ティエラを差し出せば、相応の地位を与えてやる、と・・・」
「それが、どうした」
余裕のメイザス伯爵に、ラフェルは哀れそうな目を向ける。
「哀れな・・・。
そんな戯言を信じて、主家を売るか。
見下げた臣下だな」
「ふんっ、何とでも言え。
忠義に対して何も返してくれぬ主君ほど不要な者はない」
「そして、騙されるのか。
どっちもどっちの選択だな。
1つ警告してやる。
いずれ、滅ぶぞ。
その醜い心のままではな」
ラフェルの皮肉に、眉を顰めて身を翻す。
去って行く背中を睨み付けながら、ラフェルは息をついてティエラの縄を切りにかかる。
「ラフェル、さっきのは・・・」
聞こうとして顔を向けるが、その途端目の前を何かがかすめた。
ドサッ。
「ラ、フェル・・・?」
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