罪の始まりと償い

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(俺とは何が違うのかな?) ラフェルは思う。 髪も瞳も同じで、違うのは性別だけで大した差はないように思える。 だが、内面には果てしない違いがあった。 「・・・ラシェア。 今日中に読みたい本があるんだ。 1人に、してくれないかな」 ラフェルが少しばかり固い口調で言うと、ラシェアは柔らかく微笑んで頷いた。 その微笑みが、慈愛に満ちた母親のようで、一瞬ドキリとした。 ラシェアは結っていない髪を揺らし、部屋を後にする。 手元に適当な本を引っ張り寄せる。 「・・・どうして、ラシェアみたいにいかないんだろう」 いつからか、学問でも勝てなくなった。 武術で勝てないのは昔からだったのに。 本のページをめくりながら、内容は全く頭に入っていなかった。 ラフェルは自分を無力で、小さな存在のように感じていた。 「こんなのは、嫌だ・・・!」 妹に対して、ドロドロした嫉妬を抱きたくない。 潔癖な部分を持ち、妹を大切に思うラフェルにとって、その感情は許せなかった。 わずか11。 幼いながらに、その小さな心は確かに、着実に荒み澱んでいった・・・。 .
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