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「殿下。
新しく近衛見習いとして入った者を連れて参りました」
「・・・ティカド伯爵の、ご子息だとか」
「はい。
ユアン・ティカドと申します」
近衛隊の小隊長がユアンを引き連れて、ラフェルの元にやって来た。
少女めいた容姿のユアンを見て、ラフェルはドロリとした感情が沸いて来るのを感じた。
(・・・ラシェアの、友人)
2言3言言って、小隊長は去って行く。
残ったのはユアンとラフェル。
「ラシェアと、仲が良いそうだね」
問われて、ユアンはキョトンとする。
だが、1瞬後に理解して、柔らかい微笑みを浮かべる。
「・・・はい。
懇意にさせていただいております」
「そう・・・」
力なく頷くラフェルに、ユアンは目線を合わせるように膝を折った。
「よく、殿下の話を聞いております。
とても優しく、頭の良い方だと」
言葉に小さく複雑な笑みを浮かべて、視線を逸らす。
・・・これ以上、惨めにしないでほしい。
分からないはずがない。
ラシェアが、彼を俺の味方にしようとしたのだ。
その事実が、力の差を感じさせる。
これ以上、嫌いたくないのに・・・。
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