265人が本棚に入れています
本棚に追加
コールが目の前の太った侍従長を寸刻みにしたいと思っていた頃、セレオはセレオでうんざりしていた。
慌ただしい室内は理解出来る。
だが、新人の教育担当者がいない。
しかも、声をかけたのにあっさりと無視された。
聞こえていないわけではない。
声をかければ、不穏な気配が現れるのだ。
(・・・しまった。
軍務省だったら、和やかだったんだろうな)
軍ならば、ガイルの知り合いが多い。
ここよりかは、まともな対応をしてくれるだろう。
(武人の息子だからって、事務が出来ないって決め付けないで欲しいな。
・・・それ言ったら、ガイルは賢者の息子なのに武人だよな)
ぼんやりとしながら光景を見ていると、意を決したようにズカズカと入り込んで行った。
出来上がった書類の束と白紙の紙を持って、隅の使っていない机に座って作業を始めた。
ものすごい勢いで書類をめくり、紙に書き写していく。
終了と同時に、1人の官吏が書類がないことに気付いた。
「あ、あれ?
ここにあったのは・・・」
「はい、どうぞ」
「お、ありが・・・・・・ッッ!?」
官吏はさっきまで無視していたセレオがそこにいて、驚いた。
周りも驚いたようで、シンとして固まっている。
それを意に介さず、セレオはニッコリと笑う。
「誤字脱字多すぎ。
字も改行も目茶苦茶。
よくこれでやってこれましたね。
何年やってるんですか、先輩?」
喧嘩を売った。
セレオは相手にされないのなら、しなきゃいけなくなる状況を作り出したのだ。
この日、セレオと執政部との冷戦が勃発した。
最初のコメントを投稿しよう!