悪魔の声

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ガルムは湖のほとりで傷を手当てしていた。 「痛いっ、イタイ、手加減なんかしないんだからな、あいつら」 青年は見るからに虐待を受けていた。片目は潰れて、体中に切り傷と火傷の跡が残っていた… 「くぅ~ッ、染みる」 血を水で洗いながしながら、呟いた。 …なぜ? 僕がこんな事になったんだ。 自分が生まれる前に牧師から悪魔憑きと宣告されたから? 馬鹿らしい。 悪魔などはただの作り話だ。 それに、アイツらはただ…オモチャが欲しいだけだ。 人の形をした、鬱憤を晴らす為の人形が… どんな些細な事でも、僕のせいにされた。 作物が不作の時・疫病が流行ったとか。 ハッキリ言って、僕には全く関係ないじゃないか。 だが、父さんも誰も助ける事はなかった。 それどころか、虐待に歯止めが利かなくなっていた… 「クソクソクソッ、悔しい…何もできない僕も、僕を虐待する村の奴等も憎い」 いつか必ず、必ず復讐してやる。 『復讐出来る力が欲しいかい?』 フッと、僕の耳元で声がした。僕は焦り周囲を見た 「誰もいない?空耳?」 それから、湖で血を洗い終えてから僕は家へと帰った。 家に帰ると、隣近所に住んでいるベン爺さんと父さんが酒を飲んでいた。 「ただいま…」 そう言って部屋に入ろうとした時に… 『おい、待てよ。ガルム』 ベン爺さんが空になった酒瓶を持って来た。 『お前、こんな時間までなに遊んでいやがった。家の仕事くらいちゃんとやりやがれ』 僕を近くにあった棒で殴りつけられた。 「痛ッ」 『へへっ、痛いかぁ、ええッ?おい』 バシッ、バシッ! 容赦なく殴られ続けられた。 「おい、ベン爺さん、死なん程度にしとけよ」 父さんはいつもから、まるで僕をゴミ虫をみるように見ている。 僕の頭や鼻からは血が出ていた。 『へっ、この疫病神っ!』 そう言って、棒を僕に投げ付けて、また父さんと酒を飲み始めた… クソっ! 僕は、すぐに家を飛び出した。 もう、この家には居たくなかった。 そして、また湖の所まで来ていた。 「クソォォっ! 力が欲しい。誰にも負けない力がっ!」 腹の底から、そう叫んだ。 すると… 『欲しいのかい。力が…』 さっき耳元に聞こえた声がハッキリと聞こえた。 『あげるよ、君が欲しいなら』 「ダレ?何処にいるの」 声はすぐ近くからするのに、声の主がいない? 『君のすぐ近くに居るよ。今の君には見えないけどね』
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