383人が本棚に入れています
本棚に追加
「ガイ、もう一杯」
「おいおい、ユーリィ。飲みすぎだぞ」
僕は空のビンを振りながら、今日何回目かわからないため息をついた。
まったく、僕がいくら飲もうと、ガイには関係ないだろ。
だいたい、暇なんだから飲まなきゃやってらんない。
こんなボロボロで、古臭い所で飲んであげてるだけ感謝してほしいくらいだ。
「いいじゃん。ここ、僕以外に客いないんだから」
ガイは肩をすくめながら僕の前に本日8杯目のコーラを置いた。
全く、始めから素直に渡せばいいものを。
ゴクゴクとコーラを飲み干すとガイは呆れたように僕を見ていた。
「お前、ここは酒場じゃないんだ。そんなにゴクゴクと飲みまくるな」
「酒場みたいな物だろ? こんな辺境の地にわざわざ仲間探しにくるやつなんていないし」
そう、僕が今いる場所はこの村に一つしかない人材斡旋所。
通称“地獄の門”
勇者はここに魔法使いや戦士、僧侶、剣士、武道家といった仲間を探しやってくる。
ガイは仲間を探しに来た勇者と仲間を待っている魔法使い達を繋げる仲介屋だ。
なぜ地獄の門と言うのかと言うと、ここで出会った仲間は次の町の地獄の門まで行動を共にしなければならない。
そんな変な決まりがいつからあるのかは僕は知らないが、この決まりのせいで、戦闘能力が低い奴を選べば、全く使い者にならなかったり、殺しが趣味な奴に、後ろから斬りつけられたりもする。
ここの扉は、そんな生死を分ける門なのだ。
最初のコメントを投稿しよう!