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真夜中二時すぎ、あるタクシー運転手のTは仕事をサボりにまたいつもの公園に向かっていた。
公園へ向かう途中に、道の真ん中につったっていた女を見つけ、慌ててブレーキを踏んだ。
「危ねぇじゃねぇか!!」
Tは窓から身を乗り出して叫んだ。しかし女は動じず、無言でうつ向き加減にこちらに向かって来る。そしてタクシーに乗り込んだ。
「…!?お客さん乗ってくんだったのか。どこまでだ?」
Tが聞くと、
「…まで」
女は相変わらずうつ向いてそう答える。
気味の悪いのを乗せてしまったぜ……
Tはそう思いながらも車を出した。
女の言っていた場所に着いた。これまた気味の悪いアパートだった。
お金を置いていくと女はすっとタクシーから出ていった。
……なにもなくてよかった。Tはホッとして車を発進させようとしたその時、後部座席に置いてあった眼帯を見つけた。
きっとさっきの女だ。
置いてったんだな。
Tはすぐに女を追いかけ、入っていったと思われる部屋の前で立ち止まった。
チャイムを鳴らすが返事がない。
…おかしいな
確かにこの部屋のドアが閉まるのを見たのだが…
Tは不思議に思い、ドアののぞき穴にゆっくり顔を近づけた。
のぞくと部屋のなかが真っ赤に染まっているのが見えた。Tは急いで顔を離した。
何が何だかわからず、とりあえずTは管理人の部屋へと向かい事情を話した。
「この眼帯、あの部屋の方が置いていったみたいで。それにしても何なんですかねあの女は!! 部屋も真っ赤で気味が悪い」
管理人は何も言わずただ一言こう答えた。
「あぁ、あの目が赤い女ね」
Tは硬直した。
俺が覗いたのは部屋じゃない。
女の……
目だ
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