怪談

片づける女

友達のＦという男が体験した話。
Ｆは片づけられない男で、部屋なんかすごく汚い。
ある日、Ｆが学校から帰ると部屋が片づけられていた。おかしいと思ったのだが親の仕業だろうと思い込み、とりあえず気にしなかったそうだ。
綺麗になったといっても片づけられない男なもんで、一日でまた汚くなった。
だが次の日も学校から帰ってくると部屋が片づいていた。その日から毎日のようにそれが続いたという。
Ｆはほんとにおかしいと思った。泥棒とかではない。何も取られていないから。ただ、毎日部屋が片づけられていた。
ある日Ｆは貯めていたお金でビデオカメラを買った。撮影して部屋で何が起きたか見てやろうと思ったのだ。
そして朝、ビデオを部屋の角にセットし、録画ボタンを押して学校に行った。
夕方、Ｆが学校から帰ってくるとやはり部屋は片づいていた。
カメラの録画をオフにし、早速見ようとビデオをデッキにセットして再生する。
朝の光景、Ｆがカメラをセットしていたところだった。準備が終わって部屋から出る。ドアがガチャンと閉まったその時、襖がスーッと開いた。そしてその中から女が出てきた。髪がものすごく長く、白い和服みたいなのを着ていた。女が何をするのかと思うと、部屋を片づけ始めた。それもすごくゆっくり。
Ｆは不気味に思った。かなり時間が経ち、女は片づけ終わると襖の中に入り、スーッと戸を閉めた。その瞬間、部屋のドアが開き、Ｆが帰ってきた。そしてカメラの録画をオフにした。
Ｆはとっさに襖に目をやると、襖は少しだけ開いていて、その隙間から女はじっと覗きこんでいた。