かいだん

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いつも首に黒いスカーフを巻いている女の子がいた。 スカーフをとったところを見た人はだれひとりいない。体育で着替える時だってつけているのだ。 同級生の中にこの女の子に好意をもっている男子がいた。 その男子はあるとき, 「ねぇ,どうしていつも黒いスカーフをしてるの?」 と聞いた。 女の子はにこっとほほえんで, 「中学生になったら教えてあげる」 と答えた。 やがて中学生になった二人は同じ部活に入った。 ある日,練習が終わった後で, 「どうしてきみはいつも黒いスカーフをしてるの?」 と聞いた。 女の子は少し考えて, 「高校生になったら教えてあげる」 と答えた。 中学を卒業すると男の子と女の子はそれぞれ違う高校に進んだが,ずっと付き合っていた。 ある日,男の子が聞いた。 「どうしていつも黒いスカーフをしてるの?」 彼女はちょっと困った顔で, 「大学生になったら教えてあげるわ」 と答えた。 大学生になった二人はある日,デートをした。 その帰り道で, 「どうしていつも黒いスカーフをしてるの?」 と聞いた。 彼女は少し悲しそうな表情をして, 「結婚したら教えてあげる」 と答えた。大学を卒業した二人は,みんなから祝福されて結婚した。 結婚式が終わってマイホームの二階にいるとき,夫が聞いた。 「どうしてきみはいつも黒いスカーフをしてるの?」 「もうこれ以上隠しきれないわ」 と呟いてスカーフを外すと,彼女の首がポロリと足元に落ちた。 ダン ダン ダン 胴体から離れた首は階段を音を立てながらゆっくり転げ落ちていった。 これがかいだん。
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