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Sは驚愕の表情を浮かべ、すぐさま停止ボタンを何度も押す。
何度も…
だが…
ギコギコギコギコ……!!
…止まない。それどころか切るペースが速くなっていた。
「くそ!!!」
軽いパニック状態に陥ったSは一刻も早く逃げようと窓に手をかけたが
「…あれ?…いない…」
さっきまでずっと柱を切り続けていた若い男はいつの間にかいなくなっていた。
「…はっ…何だよこれ…」
一気に気力が抜けたSは一服しようと煙草に手を伸ばす。
ボッ
カチッ
最初の一口を大きく吸い込むと一気に口から吐き出した。
「…ふ――ッ」
疲れを癒そうと膝を立てた状態で上半身を寝かせた。そして
目に映ったのは…
若い男。
左手には
のこぎり…
ポロッ
口にくわえていた煙草が落ちる。
『…またせたな……』
まるで人間とは思えない程の低い声。
Sはバッと飛び起き、手をついて逃げる。
だが、その世界はまるでスローモーションだった。
若い男は早送りのような速さでSに追い付き、瞬く間に高く挙げたのこぎりが降り下ろされた。
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