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「ヤベッもうこんな時間か」
時計を見たNは慌てた。
同い年のいとこの家に遊びに来てつい話に夢中になり、気がついたら十時を過ぎていたのだ。
「今夜は遅いから泊まっていきなさい」
おばさんは心配してくれたが、
「明日学校があるから」
と言って家を出た。
いとこの家からNの家までは早足で歩いて一時間かかる。
大きな道が川沿いに続き、途中には街灯もあって安全なのだがかなり遠回りになる。
急いで帰りたかったNは途中から近道を通ることにした。
烏山と呼ばれている小高い森を横切るように越えて行くとずっと早く家に着く。
しかしこちらの方は道幅が狭く、そのうえ寂しい山道でもちろん街灯も立っていない。
昼間には何度か通ったことはあるが夜歩くのは初めてだ。
懐中電灯の灯りを頼りに足元に注意しながら歩き始めた。
森はしんと静まりかえっていた。
ガサガサッ
時折、木の葉が揺れる音がし、その度にビクッと心を震わせながら必死の思いで進んだ。
そして二十分程歩き、山の上に出た。ここには百年以上経つといわれる古びた神社がある。
昼間ならここで一休みするところだが、今はとてもそんな余裕などない。
脇目もふらず鳥居の前を過ぎようとした時、
…コ-ン…
…コ-ン…
何かを打つような音が微かに響いてきた。
はじめはどこか遠くの方から聞こえてくるように感じていたがしばらくいくと、
カツ-ン…
カツ-ン…
とはっきり耳に届くようになった。
「誰かいるな…」
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