藁人形

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ギィ──…… 男は中を覗き込み、 『いなぁい……』 吐き捨てるように呟くと隣のドアをノックした。 『ここにもいなぁい……』 こうして一つずつ中を覗いてくるのだ。一番奥でNはガタガタ震えながら頭を伏せて小さくなっていた。 まもなく、隠れているすぐ隣のドアが開けられる音がした時には、 (もうダメだ…誰か来てくれー!!) 心の中で叫びながら半分意識を失っていた。 どのくらい経っただろうか。 五分、十分経っても何故か最後のドアをノックする音がない。 今来るか、今来るかと脅えていたNは少しずつ気持ちが落ち着いてきた。 辺りの様子に耳をたてながら、 「た、助かったぁ……」 ホッとして顔を上げると、 「ぅわッッ!!」 上から藁人形が覗き込んでいた。 思わず飛び上がったが人形だとわかりホッと胸を撫で下ろした。 「ふぅ――ッ」 大きなため息をついてドアを開けた。 ギィ──…… 目の前には 男 『待ってたぞ……』
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