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──いよいよ八月の満月の夜が来た。一年に一度の機会。
夜の九時に二人は校内に忍びこんだ。夜の学校は不気味だ。暗い廊下には非常口の灯りがぼんやりともっているだけで,今にもなにかが飛び出してきそうな気配。
二人はびくびくしながらやっとの思いで四階のトイレに辿り着いた。
トイレの灯りを点けると,Kは恐る恐る鏡の前に立ってみた。
「おい,なにか映ったか?」
Gが横から心配そうに言った。
「……いや,別に。おれだけだよ。」
「やっぱりな。先輩の話なんて嘘に決まってるぜ」
ひそひそ話していたが,少し経ってKはぎょっとした表情で鏡をのぞきこんだ。
鏡に映った自分の姿が少しずつ薄くなり,消え始めたのだ。
「どうしたんだ」と思っているうちに,ぼうっと違った顔が浮かび上がってきた。
─ でた――!! ─
叫んだのだが恐怖のあまり声にならない。
まるで金縛りにあったように立ったままガタガタ震えだした。
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