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次の日もいつものように部活が済んで夕暮れの道を帰っていると,墓地の前に白い服を着た女性が立っていた。
Aは思わずブレーキを握った。
髪を長くのばした青白い顔の女性で,困った表情をしていた。
「なにかあったのですか?」
と声をかけると
「実は昨日,この辺りで財布を落としたものですから」
と言った。
Aは「俺が拾った財布だな」と気づいてドキッとしたが,なにくわぬ顔で
「どんな財布ですか?」
と聞きました。
「白い女ものの財布です」
「じゃあ一緒に探してあげますよ」
自転車から降りるとAは親切を装ってその辺をキョロキョロと探すフリをしていた。
Aが探している間,女の人は恐い顔でじっとAを睨みつけていた。
「どうかしたんですか?」
Aが振り返ると女の人は低い声で言った。
「あの~私,財布を拾った人を知ってるんですけど」
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