魔導師の予言

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「ちょっと……貴方たち」  そこには軽装な鎧を身に纏い、燃えるような深紅の髪を肩に掛かる程度で切り揃えた女性が立っていた。  彼女の手には剣が鞘ごと握られている。  女戦士は朱色の瞳を鋭く光らせグレスとアールを睨みつけた。 「なにが、いい暇つぶしになりそうだ……、よ。もっと真剣にやんなさい」 「グロリア!」  声の主を見てアールは驚き同時に表情を引きつらせた。  グロリアと呼ばれたその女戦士はつかつかと二人に近づいて来る。  ややきつい印象を持つ彼女は、グレス達よりも五歳ほど年下であるが、グレスとアールの共通の良き友人であった。  グロリアはごく普通の中流の家庭に生まれ育ったのだが、元々男勝りだった為ちょっと、(いやかなり……)『変わったお嬢様』として中流階級の家々では有名な人物であった。  淑女としての教育にはまったく興味が無く……困ったことに剣術や馬術といった騎士としての勉強のほうを好んでいたのだ。  両親の大反対を押し切って討伐隊に入隊したのは数年前。  社交界ではその噂で持ちきりだったのをアールは覚えている。
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