魔導師の思い

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 大聖堂から続く廊下をパタパタと走る人影があった。人影は白い大理石でできた柱の続く廊下を通り過ぎる。  誰かを捜しているのか時々周囲を見回している。 「どこに行ったのかしら……」  そう言いながら深紅の髪を掻き揚げた。  人影はグロリアだった。彼女は相棒の魔導師を捜しているのだ。 「意外と足速いんだから……。あ、いた!」  大神殿の出口付近の通路を歩いているファータの姿を捉え追いかける。 「ファータ!……ファータ!ちょっと!待ちなさいよ」  呼び止められて青年は振り返る。 「あぁグロリア。どうしたんですか?そんなに息を切らして……」  先程のグレス達と会っていた時とはまったく違い、人好きのする笑顔を見せながら不思議そうに話す。 「……誰の、せいだと、思って、るのよ」  そこには息を切らして立つグロリアの姿があった。 「誰のせいなんでしょう?」  真剣に聞き返してくるファータを見て、グロリアは半ば諦めの表情をしてがっくりと肩を落とす。  呼吸を整えながら問う。 「さっきのあれは、一体、何?……失礼でしょ」
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