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ファータの言葉にグロリアはむっとした表情をした。
「あれのどこが失礼じゃないって言うのよ。魔物退治に行こうとしている人に対して、死相が出ているなんて……」
グロリアは強い口調で金髪の魔導師に言い放つ。
「あれじゃ誰だって怒るわよ」
怒っていたのは主にグレス本人ではなくその親友のアールだったのだが……あえてその辺りには触れずにいた。
対する魔導師は静かにグロリアに向き合い彼女の言葉を聞いていた。
二人の間を静寂が支配する。
暫く経ちおもむろにファータは口を開いた。
「……私はただ、彼にも選ぶ権利があると思ったから……伝えただけです……」
静かな口調で淡々とファータは話す。
「彼の歩む道の先には不幸な死が待ち受けます。見えてしまった未来は変わりません。今までも……そうでした」
ファータは遠い目をする。
どんなに足掻いても変えられなかった過去を思い出すかのように……。
「グロリア、貴女には多分……私の気持ちは解らないでしょうね」
ファータは静かに目を伏せた。その様子を見てグロリアは表情を緩め不安そうな顔を見せた。
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