姫巫女の願い

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その場所は 暖かな光に包まれていた 忘れようもない美しい少女 彼女がいれば 何もいらないとさえ 思っていた あのころ…… もう二度と取り戻せないと わかっていても あの暖かな日々を…… もう一度…… 「グレス――、起きろ。神官長とミゼルオーラさまがお見えだ」  隣の親友に起こされ彼は……暖かく心安らぐまどろみの中から意識を浮上させた。 「…………」  グレスと呼ばれた青年は若草色の瞳をゆっくりと開く。  白い大理石でできた大神殿の広間の柱に寄りかかるようにして彼は座っていた。夜通し働きつめていたため、疲れていつのまにか眠っていたらしい。  美しい彫刻を施された天井にはいくつもの明かりが灯っている。  正面には祭壇があり中央には乳白色の女神像が安置されていた。女神像は明かりに照らされすべらかな光を反射している。  それらを一瞥しながら立ち上がりグレスは周囲を見渡す。  周囲には大勢の騎士や傭兵たちが集まっていた。
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