姫巫女の願い

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 隣には同じように招集をかけられた『竜飛隊』の副隊長がじっとグレスを見つめている。  彼はアールといって先ほど寝ているグレスを起こした青年である。  彼らは、国内に時々出ては人々を惑わす魔物を退治するために結成された討伐隊に属しており、グレスは『黒刹隊』の隊長であった。 「まったく暇さえあれば寝てんだから……ほら始まったぜ」  親友に促され神殿の奥にある祭壇に向くと、まもなく聖なる法衣を身にまとった神官長と神官見習いであり姫巫女でもある少女……ミゼルオーラが静かに入ってきた。  それまでざわついていた広間がシンと静まり返る。  ミゼルオーラは淡い若草色の髪を星の浮き出る紅玉をあしらったサークレットでとめ、深い群青のローブを纏っていた。  愛らしい顔立ちの少女は俯き静かに神官長の後に続く。 「皆、早朝よりの勤めご苦労である。此度は此れにある我が娘……姫巫女より……重大な報告がある故、こうして皆に集まってもらった。さぁ……ミゼルオーラ。皆に話しなさい」  神官長はそう言うと静かに所定の席に座る。  ミゼルオーラは思いつめた表情をしたまま祭壇の中央へ進み、意を決し集まった騎士たちに語りかけた。
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