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心の声
早い話が私はサトリだ。
うちの家系はたまに出る。
お陰で
嘘でぬりかためられたこの世界で
絶望を通り越し
落胆を通り越し
失意の境地に辿り着いた。
学校。
行かないのが面倒なので行っている。
なるべく人間にかかわりたくない。
顔を合わせてくだらない事を話しあわさせられる。
隣の奴は不愉快そう。
(めんどくせぇ)
まったくだ。
斜め前のは上の空。
(っーかまじいみねー)
まったくだ。
反対隣の真面目そうな顔した奴だって…。
(一夫一婦制とヒップホップ系って似てるよね?)
『ブフッ…ケホッケホッ…』
真面目な顔で何考えてんだ!!
吹き出したじゃないか!!
咳払いで誤魔化せたが、一瞬自分に回りの意識が集まる。
不愉快だ。
誰も私を意識するな。
すぐに意識が拡散するが、まだ一人、こっちに意識を向けている。
奴だ…。
(お前…私の心を読んでるな?)
核心を突かれ、寒気が走る。
落ち着け…。
あの程度で確信がもてるものか。
無視だ。
(誤魔化しても無駄だよ)
鳥肌が立つ。
まさかこいつも心の声が…
(いや予測してるだけだよ)
同調してはダメだ…バレたら…私は…。
(大丈夫。誰にも言わないさ)
…!?どうするつもりだ…
(でも恥ずかしいな)
(君を好きな事がつつぬけだったなんて)
…!!!?なっ…
(目が綺麗…まつ毛が長いなぁ。あれ?耳が赤いよ?照れてるの?可愛いね)
…くっ…
思わず耳と目を覆い隠そうとして手がビクッと動く。
落ち着け…意識するな…心を聞くな…。
(一目見た時から君が好きだ。その力も含めて愛するから…)
……。
(…俺のものになれ!!)
ゴンッ
机に頭をうった。
恋愛に免疫のない心を
ごっそりもっていかれた。
私の急変に教室がざわめく。
『大丈夫か?顔真っ赤だぞ!誰か保健室に連れていってやれ』
その言葉に誰かが肩を貸してくれる。
人に借りを作るのは嫌だが…この教室にいるよりはましだ。
まだ体が熱い。
まだ顔が熱い。
この私が恋?まさか…。
肩を借りた誰かが不意に声をかけてきた。
『大丈夫?』
(けっこう純情なんだね)
お前かーーー!!!
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