夢見るように

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一年 一年ともなると、しかも同居となれば 今まで知らなかった互いの一面が見えてくる事などざらにある 例えば、俺は街が散らかし魔であることなど知らなかったし また街も、俺が片付け魔であることは知らなかった まあ上記のような一面などは、ある意味利害が一致していて特に問題などはないが その他の、街が酒が入ると暴れるとか、首を痛める癖にソファーで寝るとことか 苦労させられる事の方が断然多い だけど、苦労だなんだと言いつつも やっぱり、自分の好きな人の事を知ることができるということは嬉しい訳で のろけるようで悪いが、俺は同居して幸せだ その中でも一際 嬉しい発見を一つ それは、街の仕事風景を見ることができること 街は独立したアトリエを持っていない 俺が、今は亡き両親から譲り受けた、小ぢんまりした一軒家の一番広い部屋を 街にアトリエとして提供している その辺に恩は感じているのか、街は俺がアトリエに入ることを拒まない さすがにうるさくすれば追い出されるだろうが、今のところ俺は、邪魔にならないように晩酌したり自分の仕事をしたりしているため、そういう事はない だが、そうまでして恋人の仕事姿なんか見たがるもんだろうかと、大抵の人は思うだろう しかし、俺は見たい そうまでしたって見たい 何故か それは、街の顔だ 街は、その堅牢な牙城さえ崩してしまえば、甘く可愛く蕩けるように愛らしくなる が 普段は攻撃的で暴力的、皮肉屋でストイックな上乱暴者だ しかも、その壁が崩れることは本当にたまにしかない 半年に一度あればいいほうだ それがどう、街の仕事姿と繋がるかというと あの顔なのだ あの、たまにしか見れない貴重な貴重な まるで夢でも見ているかのようなあの顔 仕事中の街はまさに、あの顔をしている 画用紙やパソコン画面を見る街の顔は 唇は何度も噛み締める癖のせいか、紅くぽってりと色づき、吐息がふわりと漏れるように小さく開いている いつもの強い意志の光が爛々と灯っている目は、奥にその色を覗かせつつもとろとろと蕩けきり、瞬きは少なくそのせいかいつもうるんでいる 頬は薔薇色に染まり、いつもは元気に跳ねる細い眉もゆらりと下がる そして時折見せる 無意識だろう微かな微笑み はじめて見たとき俺は 本当に見とれて、動けなかった
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