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アキラとは中学からの友達で、男子の中でも特にいつも一緒に行動していた。
周りからは「親友」などと言われているが、それはアキラに対し何か悪い気がするので、それを言われた時はいつも曖昧に笑っているだけだった。
「あー……確かに『実質』最後だな。やっぱ大学受験って高校のより難しいんかねー」
「知らん。てゆーかさ、テスト終わったばっかなのに受験の話は止めようぜ。今はこの高二の夏をどう過ごすかについてのみ意見を許す!」
そう言いながらアキラは、持っていたコーラの缶を裁判の判決をするようにアスファルトに打ち付けた。
缶に付いた水滴が屋上の地面に染み込んで、夏の日差しがそれを消し去る。
「でもなぁ……女子は放課後に残って勉強してるらしいぜ。紺野や熊谷辺りのグループ」
「いーの。奴らは青春の無駄遣いしてるの。俺らは賢く青春するぞ!」
才色兼備を絵に描いたような紺野あずさ、誰とでも仲良く出来て教師の信頼も厚い彼女は、俺の知る限りでは最も出来た人間だ。
駄々をこねるアキラを無視して財布の中を探っていると、カラオケボックスのカードを見つけた。
「……あ、平日だからカラオケ安いけど、久しぶりに歌うか? フリータイムで。ほれ」
手渡されたプラスチック製のそれを訝しげに見たアキラは、先程とは打って変わって瞳を輝かせた。
「お、それナイスアイディア!クラスで部活ない奴らも誘って行こうぜ!」
乾いた熱を纏った微風に目を細めつつ、微笑みながら相槌を打つ。
「じゃあ俺は教室に居る奴らに声かけてくるわ!」
そう言ってアキラはコーラを一気飲みし、軽くむせながら慌ただしく屋上を後にした。
その背中を扉の閉まる金属音がするまで見送った俺は、金網のフェンスに体を預け、独りため息を漏らしながら空を仰いだ。
今日も雲一つない快晴。
変わらない日々。
この暗い気分の原因を、どこまでも続く青空に求める事は出来そうになかった。
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