36人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「佐藤ってさぁ、彼女とか作んないの? 結構モテるっしょ」
アイスティーの氷をストローで突きながら、クラスの女子が聞いてきた。
カラオケのあと、用事の無い何人かで近くにあるファミレスに寄ったのだ。
店内の客の半数が中高生なせいで、騒音とも取れる話し声と、追加注文を促す電子音とが絶えず響いていた。
「あー、そうそう。ウチの後輩も佐藤君のこと感じ良いって言ってた。告白とかされたことある?」
そんな音を気にも留めず、向かいの女子が興味ありげに身を乗り出してくる。
「いやー、告白されたりはしたけど付き合ったこと無いわぁ」
「……はぁ? あんた女の子を振ったの!? 最悪なんですけど」
この類の話は苦手だったので笑顔で流そうとしたつもりが、却って彼女らの反感を買ってしまったらしい。
女子たちは露骨に顔を歪め、口を揃えて罵倒してきた。
こういった時の女の団結力は凄まじいもので、一を投げると十で返されてしまう。
それでも出来る限り笑顔を崩さないまま、次の一手を考える。
「いやね、嫌いってワケじゃなかったんだけど……何つーのかな……」
──理由は、自分でも良く分かっていた。
最初のコメントを投稿しよう!