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「ほんじゃマコト、また明日な」
「ん」
そう言って少し行くと、遠くから声がした。
「マコトぉー!」
振り返ると小さく見える人影はアキラだった。街の明かりに照らされ、その姿は淡く眩しい。
「なんだー!」
「……最後の夏なんだからさぁー、青春しようぜー!!」
――考えてみると、今日一日ずっとボンヤリしっぱなしだった。
「……わあったよー!」
「じゃあなー!」
「おー!」
カラオケもファミレスも、そして今も、友を元気づけようとするあいつなりの気遣いなのだろうかと考えると、不思議と声が出てきた。
自分でも恥ずかしいくらいの大声だったが、妙な清々しさも感じていた。
だが再び一人歩いてみれば、やってきたのは、沈黙と罪悪感。
こんなにも良い友人に恵まれているのに、自分という人間は、彼らを偽り続けている。
そう考えると、先ほどまでの純朴な気持ちに汚い染みが出来たように感じられ、足取りも重くなっていった。
すがるように上げた目線の先には、薄暗い街灯と、どこまでも続く細長い道だけが続いていた。
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