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閉めきったカーテン。
薄明かりの向こうから、セミの合唱が聞こえる。
──もう朝か。……のど乾いたなぁ。
布団の中でボンヤリしながら、つけっぱなしだったエアコンを見る。
目覚まし時計に視線をやると、セットした時刻の五分前だった。
──じゃあ、このままあと五分だけ……。
布団の外側にあるシーツや枕が、起き抜けの体温にはヒンヤリして心地良い。
でもずっとそこに手足を置いていたら、頭より先に体が目覚めてしまうので、まどろみを楽しむために元の温かい位置に引っ込める。
しばらく布団の内と外、ぬくぬくとヒンヤリの間を行き来して楽しんでいると、一階から誰かが上がってくる音がした。
「あずさぁー? 起きなさーい」
──あと三十秒くらいあるんだけどなぁ……。
仕方なく上半身だけを起こし、目覚まし時計をポンと撫でて、ただの置き時計に戻してやる。
名残惜しげにベッドから降りた私は窓辺に歩み寄り、一気にカーテンを開いた。
薄暗かった部屋に、光が射し込む。
壁に掛かったカレンダーにも、
使い古しの勉強机にも、
くたびれたヌイグルミにも、
お気に入りのキーホルダーにも、
そして、私自身にも。
今日も、朝がやってきた。
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