紺野 あずさ(コンノ アズサ)①

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    リビングには母だけが居て、朝食の準備をしていた。 トーストやベーコンエッグの焼ける匂いが食欲を誘う。 「お母さんおはよぉ」 「おはよ。ねぇあずさ、またエアコン付けっぱなしだったの? 風邪ひいても知らないからね」 「んー……なんかノド痛い」 それを聞いた母は手を止め、まじまじと私を見た。 「えっ本当? あんた大丈夫? もし風邪だったらお薬あるよ?」 「んーん平気。乾燥しただけだから」 朝のニューストピックスを眺めながら答えると、母のため息が聞こえたような気がした。 「おどかさないでよ。じゃあ顔洗っといで。ついでに泰宏(ヤスヒロ)も起こしてきてよ」 「えー……ヤス起こしても起きないじゃん」 「でも起こさないと怒るんだから、あの子ったら理不尽よねぇ」 洗面所で髭を剃っている父に挨拶をし、その横で洗顔フォームを泡立てて念入りに顔を洗い、ついでに歯も磨く。 そうしてぐうたらな弟をベッドから引きずりだしたあと、家族揃って朝食をとる。 これが、我が家の日常だ。    
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