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「ねぇ母さん」
トーストに苺ジャムを塗りながらボサボサ頭の泰宏が尋ねた。
「俺の弁当さ、同じ具ばっかで最近なんか飽きてきたんだよね。あとよく分かんない汁とかがご飯に移ったりして嫌なんだけど」
「そう思ってるなら自分で作りなさいよまったく。あ、ジャムちょうだい」
母はやれやれといった表情でサラダを取り分けている。
母の意見はもっともだ。
家族の誰よりも早起きして朝食の準備をし、みんなを起こし、私達のお昼を作ってくれる。
それも毎日。
しかも父だけは朝食がご飯派なので余計に大変じゃないかと質問したことがあるが、「お弁当のついでだからかえって楽よ」という答えがサラリと返ってきた。
「あんたも高校生なんだから、少しはお姉ちゃんを見習いなさいよ」
母が泰宏からジャムを受け取りながら、お決まりの文句を唱えた。
それを聞いた泰宏は、ヘラヘラしながら何を言いだすのかと思えば
「いや俺がこんな風になったのには、姉ちゃんにも原因があると思うんだよねぇ」
「ちょ、どうしてあたしが出てくるわけ!?」
「だってさ、こんなしっかり者の姉を持ったら弟は甘やかされるに決まってんじゃん」
泰宏はボイルウインナーにマスタードをからめながら得意気に話す。
「まぁたこの子は屁理屈を……」
こんな毎朝のやり取りを、私と父はやれやれといった感じで眺めながら出かける準備をする。
これもまた、我が家の日常なのだ。
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