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中一の春、小学校を卒業すると同時にこっちへ転校してきた私は、影で「根暗のガリ勉」と呼ばれていた。
友達は少なかった。
ちょっとしてテニス部に入ってからは「真面目だね」と言われた。
自分から積極的に話し掛け、クラスにも友達ができた。
その夏、眼鏡をコンタクトレンズに替えて縮毛をかけたら「可愛くて頭も良いなんて羨ましい」と言われた。
中二の冬、部長と生徒会長に推薦された。
「真面目で友人に対する思いやりもあり、男女から人気があるから」とのことだった。
中三になった。
この頃には既にクラスの中心になっており、根暗のガリ勉だった私はもう誰の記憶にも残ってはいなかった。
もちろん、それを言った本人でさえ。
体育祭で優勝し、合唱コンクールでは最優秀賞、引退試合は県大会二位。
県内トップの公立校に合格し、卒業式では総代として答辞を述べた。
誰もが羨む、夢のような一年間。
でも、皆が抱き合い涙する場面で私一人だけが泣いていなかった。
私は、自分のことが嫌いだった。
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