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高校に入学してしばらく経ったある秋の日、私は同じ文化祭実行委員だった子に相談を持ちかけられた。
隣のクラスの子が持ちかけてきたそれは、よくある恋の相談……というよりも励ましの催促だった。
「佐藤って……歩美と同じクラスの明るい感じの人?」
「うん。佐藤君ってね、聞いた話だと今まで彼女とか居ないんだって。でも体育祭の看板作りの時に遅くまで手伝ってくれたり……文化祭の時もね、色々な話をしてすっごく楽しかったんだぁ」
私の前に座っている恋する少女は少しだけ顔を紅潮させて回想した後、でも自信無いんだよね、と付け足し、伏し目がちに微笑んだ。
こんな時に相手が何を求めているのかは、中学時代から何度も経験してきたので分かっていた。
「それって今までは恋愛に興味が無かっただけで、高校に入ってから変わったかもしれないよ?そんな積極的にしてくるなら、可能性あるって」
それを聞いた彼女は元気を取り戻し、落ち葉が茶色の絨毯を成す頃、告白に踏み切った。
秋と冬の境目。
夕焼けが、朱く眩しい日だった。
「ダメだったけど、あずさのお陰でちゃんと言えて良かったよ」
優しい夕日が射す放課後の教室でひとしきり涙を流した後、歩美は目を赤く腫らしながら笑ってみせた。
そんな彼女を励まし、しばらくは来ないであろう次の恋の決意をさせた後だった。
「ねぇあずさ……私たち、親友だよね……?」
──そう、答えて─…。
目を見れば分かる。
自分が何を期待され、どうすべきなのかを。
私の声で、私じゃない誰かが、笑顔で頷いた。
「そんなの、当たり前じゃない」
私は、自分のことが大嫌いになった。
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