紺野 あずさ(コンノ アズサ)②

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    人から好かれ、信頼を得るには、それに見合う対価が要る。 それは人間性、社交性、学力、運動能力、そして時には容姿すらも問われてしまう。 私が今まで人から好かれ、信頼を得られたのは、これらを努力の末に手に入れてきたからだろう。 だからもし、これらを失うことがあれば──……。 五限の英語の授業はすでに始まっていたが、私の中には、今まで無意識の内に目を背けていた様々な感情が、まるで傷口から溢れ出す血のごとく感じられて、ノートを取るどころではなかった。 ――忘れられたはずなのに、忘れようとしたのに、どうして今さら――。 根底を流れるのは、見栄とコンプレックスと自己嫌悪の渦。 それを養分に咲いた花が、何故か皆の目には強く美しく見えてしまう。 ──……いや、そう見えるようにしたのは自分だ。 綺麗に見えるように、賞賛されるように、嫌われないように、丁寧に丁寧に形を作ってきた。 だからそれは、見た目は美しくとも、触れてみればただの冷たく血の通わない造花に過ぎない。 太陽の恩恵を体中で受けとめ、在りのままに咲き誇っている花とは似ても似つかないのだ。 本当の自分というものが分からない。 「あずさらしくないよ」 私らしいって何? みんなの目に私はどう映ってるの? 何を私に期待してるの? 聞かせて。 聞けない。 聞きたい。 聞きたい──…。    
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