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気が付けば、五限の終了を知らせるチャイムが耳に入ってきた。
机の上に開かれた英語のノートは白紙のままで、黒板に敷き詰められた文字と見比べてみると、どれほどの間自分が物思いに耽っていたのかがよく分かる。
あとで友達にノートを写させてもらおうとため息をついた頃、佐藤君がいつもの笑顔でやってきた。
「うっす紺野、授業中ピクリとも動いてなかったけど平気?」
誰にでも気疲れをさせず、どんな時も変わることのない笑顔。
「うん、大丈夫。お弁当食べたら眠くなっちゃって」
──でも、今朝見たあの乾いた表情……あれは決して見間違いなんかじゃない。
「そっか。……あー、さっきの学校サボる、サボらないの話なんだけどさ」
──だとすれば、彼もまた私と同じ悩みを抱えているのだろうか。
──聞きたい。
聞きたい。
「やっぱ紺野は学校サボんのは無しにして──」
「私、行くよ」
佐藤君は、笑顔のまま固まっていた。
自分の言葉が遮られた以上に、一瞬では理解できない返答に頭の処理が追いつかないみたいだ。
私は彼の目を見て、もう一度口を開く。
「私も、二人と一緒に行く」
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