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──暑い。
ここ数日、異常とも言えるくらいに猛暑が続いた。
蝉は歓喜の雄叫びを上げ、熱にやられた道路は陽炎でのSOSを訴えている。
そんな中、俺は駅の時刻表に寄りかかってペットボトルの蓋を開け、中身を味わうことなく一気に喉の奥へと流し込んだ。
水の塊はまるで生き物のように体内を駆け巡り、内側から体の火照りを冷ましてくれた。
そうして一息ついていると、遠くから歩いてくる人影が目に映る。
通勤、通学ラッシュを過ぎたこんな時間に同じ高校の制服を着ているのは、俺かアキラか……あとは紺野しか居ないはずだ。
「おはよう佐藤君、今日も暑いねぇ」
と言いながらも、やってきた紺野は汗一つかいていなかった。
「おっす。あとはアイツだけか……」
「そうだね。って噂をすれば、ほらあそこ」
紺野の指差す方向には、両手に荷物を抱え、息を切らしながら走ってくるアキラの姿があった。
アキラは肩を上下させながら遅れてきたことを謝り、俺から投げ渡されたペットボトルを飲み干して大きく息を吐き出すと、ようやく落ち着いたようだ。
「スマン。準備に手間取った」
「別に遅刻じゃないからいいけどさ、それよりもその荷物の量は一体何なんだよ」
「いや待てマコト、これでも一応減らしてきた方なんだぜ? 気になる中身はお楽しみって事で」
そう言いながら地面に置いてあるリュックや手提げ袋をちらりと見たアキラは、どこか悪戯っぽく笑った。
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