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屋上へと続く階段は薄暗く、少し埃っぽい匂いがした。
遠くからは誰かの笑い声やボールを蹴る音などが聞こえ、自分がいま学校ではない、どこか別の世界に居るような錯覚を覚える。
――本当、そうだったら良いのに。
小さい頃は、思ったままのことを、思ったままに表現して、行動していた。
少なくとも自分はそうだったはずだ。
不満があれば駄々をこね、分からなければ尋ね、怒れば叫び、寂しければ泣く。
ただそれらは、歳を重ねる毎にだんだんと息を潜めていった。
誰もが皆、気付いてしまうのだ。
傷つき、裏切られ、見下され、憐れまれ、そんな中で、否が応でも気付かされてしまう。
世界は、思い通りになんてなりはしないと。
屋上の扉に手を掛ける。
暗い顔をするのはもう止めよう。
だって、この先にはあいつが待っているのだから。
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