佐藤 真(サトウ マコト)①

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    屋上へと続く階段は薄暗く、少し埃っぽい匂いがした。 遠くからは誰かの笑い声やボールを蹴る音などが聞こえ、自分がいま学校ではない、どこか別の世界に居るような錯覚を覚える。 ――本当、そうだったら良いのに。 小さい頃は、思ったままのことを、思ったままに表現して、行動していた。 少なくとも自分はそうだったはずだ。 不満があれば駄々をこね、分からなければ尋ね、怒れば叫び、寂しければ泣く。 ただそれらは、歳を重ねる毎にだんだんと息を潜めていった。 誰もが皆、気付いてしまうのだ。 傷つき、裏切られ、見下され、憐れまれ、そんな中で、否が応でも気付かされてしまう。 世界は、思い通りになんてなりはしないと。     屋上の扉に手を掛ける。 暗い顔をするのはもう止めよう。   だって、この先にはあいつが待っているのだから。    
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