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もう終わりか、独り言のようにあいつがぼそっと呟いた。俺になんだかんだ言ったあいつも、やはりそれなりに寂しさがあるのだろう。
「早かったなぁ、中学生活って。思っとったよりも。この一年は特にそうやわ。受験勉強もあっという間やったもん」
「三年しか。三年も、かな。せやけど高校なんてもっともっとあっという間なんやろうなあ……」
他愛もない話を、いつもより話した。最後というキーワードがやけに俺達を急かしている。多分、きっと、絶対に。俺とあいつはこれで最後だと思ったから。
「うち明日泣くんかなぁー」
「泣かんやろ、お前絶対泣かんわ。購買のドーナツ賭けるわ」
「あほ。もう卒業やねんから購買のドーナツ買われへんやろ」
「あんたさぁ、結局どこの理数科行くん?」
「杉本の理数科にした」
「うわっ、嫌味や! うちより三も偏差値上やんか!」
「あかんのかい! ……お前どこにしたん?」
「南雲女子にした。まーあんたより偏差値は下でもうちはトップ合格やからな。入学式で挨拶やで」
「嫌味やー」
「ああそうや、明日じいさんが俺らに何かくれるんやって」
「あんた一応顧問なんやから……ちゃんと鈴木先生って呼びいや……」
こんな一時で、くだらないあれこれが幸せなことだと気が付いた。あいつに言ったら笑われるだろうな、なんて、心のどこかで思った。口にも出さなかった。本当は、口になんて出せやしない。
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