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雨だ…‥…
ふと窓の外を見る
すると黒い雲から無数の水滴が落ちてきた
この天気は嫌いだ
この天気は僕の忘れ去られた記憶を再び思い出させるから
覚えてなくてもよい記憶を貴女を思い出させるから
向かえに座る彼女は不思議そうに僕を見る
「どうしたの?」
顔を覗き込まれて僕は我に帰った
「べつに、ちょっと考え事してただけ。」
僕は咄嗟に嘘をつく
「変なの。」
彼女もそう言って深追いはしないでくれた
それでも僕の記憶は思い出されるばかりだ
黒い雲
冷たい雨
白いコートが朱く染まってゆく貴女
そんな貴女と目の前の彼女が重なる
「そろそろ出ようか。」
彼女はそう言って店の外に出る
僕は頭を振り考えを消そうとした
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