薺華(せいか)

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あれから数年。娘は幼稚園に入った。俺はあの日、結局会社にちゃんと行った。休んでは忍に怒られる気がしたから。職場につき、おどろいている先輩に忍の死を告げると、逆に先輩が休んでしまった。その後、葬式等も終え、身の回りのことを終えても、幼い薺華の面倒を見るので手一杯。しかし、ある程度は自分で育てたかったので、幼稚園に入る歳までは、なんとか育てた。かなり先輩の手を借りたので、独身の先輩も、そこら辺のママくらいにはママになってしまっている。 そして、今日は忍が死んで調度4年目だ。 「ねえ、ママはなんでいないの?」 「薺華、ママはな、ちゃんと遠くで薺華のこと見てるんだよ」 「ほんとに?」 「ほんとさ、だからちゃんと今日はママにお礼しような」 「うん、ママありがとう!」 忍の墓前でそんな話をしていると、先輩がやってきた。 「あ、お姉ちゃん!」 「こんにちは、薺華ちゃん」 先輩は薺華の頭を撫でる。 「いい子に育ってるよ、あんたの子。安心しなよ、忍」 先輩は忍に向かってしっかりとした口調で言った。少し寂しそうな先輩の顔を、不思議そうに薺華が見上げる。 「お姉ちゃん大丈夫?」 「あ、ごめんね、心配しちゃった?大丈夫だよ。そうだ、お姉ちゃんお土産買ってきたの。食べる?」 「タベルー!お土産お土産!」 薺華が喜んで走り回る。 「すいません、わざわざ」 「いいの、気にしないで。一弥の家行こうよ、久々に、忍の話したいな」 「やった、お姉ちゃん家来る?」 「ウン、行くよ。さ、車のって」 俺はまだ車がない。だから先輩に家まで送ってもらう形になった。家では、夜遅くまで、薺華とのおままごとが行われた。
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