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「寝ちゃったね」
遊び疲れた薺華は、夜がふけるといきなり寝た。薺華を布団に寝かせ、先輩とビールを飲む。
「ホント、いい子に育ってよかった」
「ですね。先輩のおかげです」
ビールを飲みながら、すやすやと眠る少女を見つめる。と、急に先輩がこちらを向いた。
「ねえ、忍の名前の由来知ってる?」
「……いえ」
そういえば聞いたことなかった。
「ホントあんたが柊でよかったよ」
「はあ?」
「いやね、あの子もだった柊じゃない?実はさ、あの子名前の由来は忍冬(すいかずら)なんだわ。花言葉が愛の絆。ただでさえ木が邪魔してるのに、苗字が変わると成り立たないんだーって笑い話を、昔忍にされてね、この間ふと思いだしたから話したくてさ!あー、すっきりした」
大爆笑する先輩をよそに、俺の頭には一つの考えが生まれていた。
「花言葉……先輩花言葉って詳しいですか?」
「どうみえる?」
胸を張ってえへんなんていっている。
「自分で調べまぶっ!」
いい終わるより先に殴られてしまった。
「少しは遠慮しろ!知ってるよ!」
「なずなの花言葉って、なんですか」
「うーむ、盲点だな、知らない。なんで?」
「薺華の薺は、なずなって字なんです。そしてあの名前は、生前忍が作ったものです。……というか詳しくないなら殴らないでください」
「悪かったわね。待ってなさい、花言葉の本持ってるから。えー、なずななずなっと」
先輩はかばんからやけに分厚い本を取り出して読み始めた。
「あった!薺、花言葉は……!」
そのページを読んだ途端に、先程まで明るかった先輩の目から、急に涙がこぼれ出した。
「そっか……やっぱり覚悟、してたんだね。自分のことは自分が一番わかるもんね」
「……どうしました?」
疑問に思い、聞くと、先輩は本をこちらによこした。俺もそのページを見る。
「えーっと、……」
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