2人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
その様子を見終え、ルークの右に座る男が口を開く。
「王よ、この度の戦、おそらく勝つ見込みは露ほどのもの。時期をみて、後に攻める。それでは遅いのですか」
男はただ、燃え上がる火を見つめる。その瞳には僅かな、戸惑いと恐れが浮かんでいる。
「軍師キースよ。お前はよく働いてくれた。今ここで逃げようと、私はお前を責めはしない。……確かに、勝ち目の薄い戦いだ。わかっている。だがな、今討たねばならない。そう感じるのだ」
王は杯を置き、頭を下げる。
「……国を愛する人として、貴殿に願う。どうか、その力を我らに貸してはくれないだろうか」
しばし、その王を見つめるキース。少しして、その表情が和らぐ。
「……頭をあげてください。わかりました。このキース、例えどれほど厳しい状況でも、見事この国をもとの国に戻して見せましょう」
キースの目からは負の感情が消え去った。
「頼む」
ルークはキースの杯に酒を注ぐ。キースはそれを高く掲げ、後、一気に飲み干した。
最初のコメントを投稿しよう!