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プリアモス郊外のとある町。
そこの路地で、少年が息を切らして走っていた。
「おっと待った」
「!!」
マークが少年の行く手を阻むように壁にもたれ掛かって立っていた。
すぐに少年が逃げようとするが、腕を掴んだ。
Ι
マークがこの少年を捕えた訳は、数分前に、この少年に財布をスられたのだ。
Ι
「は、放せ!」
少年はマークの手を振りほどこうとするが、マークは放さない。
「人の財布スッといて放せはないだろ!…まぁ、この俺から財布を抜いたその腕だけは認めるがな…」
とか言って油断したスキに、砂で目暗ましをされ、逃げ出された。
「しまった!あのガキ!」
また、少年を追い掛けた。
― その数十分後、不慣れな町で時間が掛かったが、ようやく少年を捕えた。
「ハァ…ハァ…てこずらせやがって!」
「…ハァ………ハァ…」
町中を走り回ったせいでお互い息切れしている。
「さて…と、財布返してもらうぜ」
「あっ…!」
マークは少年のポケットから財布を抜き取った。
が……抜き取れた財布は一つじゃなかった。自分の物とは別に、いくつかの財布があったのだ。
明らかに少年の物じゃない。
この少年…本職のスリだ。
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