65人が本棚に入れています
本棚に追加
あの後すぐに町を出た二人は、森の中を黙々と歩き始めた。
いや、黙々という表現は間違いだ。
フレイヤは、すぐに「疲れた」だの「足が痛い」などと喚き出し、場合によっては「依頼主の命令だ」などと言って、ヒュウに背負わされたりした。
飯一つにしても一苦労だった。
携帯用の食料である、乾燥したパンや干し肉は
「こんな貧相なモノ、私は食べない!」といいはって口にしない。仕方なく果実や野兎、魚などを狩るハメになった。
他にも、何の前触れもなく「肩が凝った」「喉が乾いた」と喚き出し、一々それに世話を焼いた。
本当、手に負えないボンボン娘なフレイヤである。
いい加減、我慢できなくなったヒュウは依頼を断る話を持ちかけた。
「…なぁ、前金返すから一人で帰ってくれないか?」
「嫌よ」
即答で交渉決裂である。
「ヒュウはやっと見つけたムサ苦しくない護衛だもの。他の傭兵ってみんなゴツイ人ばっかりだものね。アンタはまだマシだったから…」
「俺を選んだ理由って…それか?」
「何よ。まさか私がヒュウに一目惚れでもしたと思ったの?
だとしたら、冗談にしたって笑えないわね」
「…全くだ…」
最初のコメントを投稿しよう!