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「――――っ…人が…人が食べたい…」
――人が…すぐ前に居る…。
姫鈴の空腹は限界まで来ていた。
鬼は命あるもの(人間、動物)を喰わないと死んでしまう。
そのうえ鬼は人間への食欲がとてつもなく強い。
だが姫鈴は
[人だけは食べたくない]
と決めていた。
喰ってしまったら姉を喰ったあの女と同じ
あの女と同じにはなりたくない……
「人…だけは………っ!!!」
ぐにゃりと世界が歪んだ
思考が廻る
何も見えない 真っ白になる
姫鈴は自我を無くした。
人が気付き振り向く
『なっ…!!!』
―バキッ…ゴリッ……
無意識に貪り喰う。
一瞬にして視界が赤くなり
姫鈴はハッとなる。
喰ってしまった。
あの女と同じになってしまった。
涙が溢れ肩が揺れる。
しかし動作は止まらない。
「…ゴチソウ…サ…マ……」
震えた声で微かに言った。
顔を涙と血でぐしゃぐしゃにして
泣き続けた。
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