~虚言~

18/22
69145人が本棚に入れています
本棚に追加
/204ページ
「ねぇ、詩穂。」 美穂が僕を呼んだ。 「何?」 「大人だって、嘘をつくの。もしかしたら、子供以上にね。」 「…そうだね。確かにそうだね。」 「あたしたちの夢、覚えてる?詐欺師だよ?人を騙す仕事…特技を生かして、ずっと2人でいようって詩穂がそう言ったから、あたしはずっと《嘘》をついてきた。だから、今更あたしは《嘘をつく》事を止められないの。でも、詩穂はもう、人を騙せない。2人で詐欺師になる事は、もうできない。」 「僕のせいで…夢、消えちゃったね。」 「ううん。いいの。だから、一つ約束して。」 「一つなんて言わないでよ!いくらでも、何度でも言ってよ!」 「一つでいいのよ。 あたしは詩穂の分まで《嘘》をつくから、詩穂はあたしの分も《真実》を言って。」 さっぱり意味が分からなかった。 すると、美穂は僕の隣りにある棚から小さな瓶を取り出し、栓を外した。 「美穂…それって!」 「《詩穂の嘘》よ。これを飲めば、あたしはこの世で一番の《嘘つき》ね。」 「や、やめてよ!そんなの飲んだら、美穂が美穂でなくなっちゃう!」 「そんなことないよ!今の詩穂も詩穂でしょ!?なら、あたしもあたしよ!それに、夢の一つくらい、叶えたいもの!」 「夢?」 美穂は今日初めて笑顔を作り、頷きながら言った。 「《ずっと2人でいよう》!詩穂は《真実》、あたしは《嘘》!これで、2人で一人だよ!」 薬を飲み干した美穂は笑いながら泣いていた。 ねぇ、それは、今までの美穂に別れを告げる悲しみの涙? それとも…― 夢が叶った喜びへの嬉し涙?
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!