2.覚醒

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「昴、明日はあなたの誕生日だから、早めに帰って来なさいね」 いつものように走りながら、昴は朝の院長先生の言葉を思い出した(後ろで篤志が「待てっ、コンニャロ!」とわめいているが、無視した)。 誕生日、と言うよりも『昴が院長先生に拾われた日』と言う方がしっくり来る。 実は昴には、7~8歳までの記憶がこれっぽっちも無い。 孤児院での生活も、最初の方の記憶は殆ど無い。 だが、クロは……。 クロは、昴が産まれた時から一緒に居る気がする。 もしそうだったら、かなりの老猫の筈だが、クロはまだまだ毛並もつやつやだ。 (なんかよく解らないけど、僕に記憶が無いって事だけははっきりしてるんだよなー……) ふと、現実に戻されて視界を広めて見ると、そこは学校だった。 「え…。あれ?」 (僕、今孤児院を出たばっかなんだけど…?) 時計を見ると、まだ9:38だ(この学校のHRは、9:45から始まる)。 孤児院を出て、まだ2分しか経っていない。 孤児院から学校までは、昴の足でも、少なくとも10分は掛かるはず。 いつもならぜえぜえと息苦しい筈なのに、全然しんどくも無い。 変だ。 何かが変だ。
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