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「橋本ー」
「はい」
「樋口ー。やっぱりいないか。みやし「はいっ!樋口居まっす!!」
昴は、教室のドアを勢いに任せてスパァン!!と開いた。
「おー。またギリギリだぞ、樋口。昨日のアレは何だったんだ」
先生は、わざとらしく溜め息をつく。
「すいません!」
「まぁ、座りなさい」
「はい!」
「次、宮下ー」
教室は、くすくす笑いに包まれている。
席に座りに行く時も、「樋口、ナイスタイミング」とか「今日は晴れだな」とか言われ、こづかれた。
そして、またいつもの日常が始まった。
(そう言えば、どうして校門にクロが居たんだろ…。)
昴は、ふと今朝の出来事を思い出す。
クロは、とても賢い猫で、昴が黙れと言うと鳴かなくなるし、昴が呼ぶといつの間にか傍らに居るような猫だ。
(まぁ、クロの散歩道に校門が追加でもされたんだろ)
なんとなく違和感を感じた昴は、チラリと横目で校庭を見た。
…冊の外に、誰かがいる。
いや、誰かがいるの位は普通の事だろう。
だが、それは異様な者に思えた。
紫色の長髪の、黒服に包まれた少女。
その傍にはクロ。
クロが自分以外になつくなんて、珍しい……。
(て言うか、誰。)
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