エスキースの双剣

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何に追われるの?分からぬまま只、前へ。伸ばし掴む腕を、掴み返した君の走る背中を追う僕の足はもつれて、手を離さないで ねぇ、何処へなら行けるんだ。 遠く町の喧騒が、馬車の走る音が、雨上がりの香りが、優しく廻り廻っていき。 今は誰に、今は何にも、囚われている肌等は無い身体が、言葉が空を舞って呼吸出来ている証さ。まだ、振り向いてしまう。後ろを引き摺る恐怖と似た旅路に足掻くこんな掌、囁く様に尋ねては。 赤、金色の瞳が指令を聞かず君を愛で、視線を外してはシラを切通しても。揺れているピアス。それは心、映して。壁にくくられた記憶の波で咽かえる。 永久に微笑む人に、伝わっているのかな。この瞳で見てる破壊が、言っていた自由なのかと。 奴のせいで、奴の為にも、今、跪かんとているお前なんか知らぬ、分かりたくない。その懺悔は見たくない!まだ、信じようとす、愚かな影を右足で踏み潰して嘆くこんな掌、何一つも守れぬと。 両手かける双剣の柄に願うは自由と決して侵されぬ存在。知ってる。分かっていたさ。どうせ僕はエスキース。ほら、白くなる髪。存在材料が目の前で耐えて逝く。 刻の軌跡はかくも、嗚呼、残酷な爪痕だけ。
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