開始

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 外に出ると真冬のような寒さで身震いし、思わずポケットに手を入れてしまう。幸運なことに携帯電話が入っていた。幸い電波は通じるようだ。試しに自宅に電話をかけたが聞こえるのは砂嵐の音だ。次に110にかけてみたが結果は同じく砂嵐だ。僅かな希望を込めて、親友に電話を掛けてみる。予想を裏切り、電源が切れているとアナウンスされる。何回か掛けるが繋がらなかった。  仕方がなく歩き出すと、芝生が手入れのされた庭に落ちていたハンドガンを拾った。地図を見るとちょうど青い点が自分のいる位置と重なっている。銃の重みを感じたせいか全身に寒気が走り、ハンドガンを落としてしまった。 (おもちゃの銃じゃない…?)  心の奥底ではこのゲームはただのイタズラだと思っていたがハンドガンを握った事でイタズラじゃないと感じる。地面に座り込み、不安を沈めるために深呼吸をするとだんだんと落ち着いてきた。少しここら辺で話を整理することにする。外の寒さが頭の回転を良くするだろう。 (さっき元の世界に戻すとか言ってたな……ってことは別世界?そんなSFみたいな話が起きるはずがない。なぜあの日の記憶無いのだろう。俺は確か……)  再び頭にチクリと痛みが走った。埒が明かないので行動することにした。誰かに会えば何か分かるかもしれないからだ。汗ばんだ手でハンドガンを握り締めながら家の前の道を歩き出した。コンクリートでできた擁壁に挟まれた道を進んでいるが、黒い男が言う「敵」に挟み撃ちにされたら一溜まりもない。 (一体敵ってなんだ。銃を使わせるんだから強いのだろうか)  キャャ!と静寂を破る悲鳴がとても近くから聞こえ、反射的に地図を見た。 「ここか」  この地図は平面的に映るようで、高さのある建物にいる際には、あんまり意味が無いだろう。近くの公園と表示された場所に赤い点と黄色い点があった。ここから100mくらいだろう。地図は縮尺を変えられるが、半径100mほどまでしか点は表示されない。公園の辺りを押すと直線距離が表示された。青い点が武器なら黄色い点か赤い点は敵である。わざわざ危険な方に進むのは難だが、敵の姿を確認するために公園に向かい走り出した。
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