助けて…

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俺は爺ちゃんに 「あの人靴ちゃんと履いてないね」って言った瞬間、電車が入って来たんだ。 札○の人は分かるだろうが、南○線は駅に入る時結構なスピードが出ている。 電車が入ると同時に周囲には数々の悲鳴が発せられていた。 悲鳴の少し前に「ダチャッ」と言う鈍い水袋を跳ねたような音も聞こえていた。 爺ちゃんは「見るな」と言って俺に後ろを向かせた。 サラリーマンが飛び込んだのだろう。 後ろは向いていたが目はつぶることが出来ず、オロオロとする他の乗客達を眺めていた。 その時だった… 俺のすぐ左にドチャッ!と赤い物を撒き散らして何かが落ちてきた。 サラリーマンの頭だった。 音に驚き、サラリーマンの頭の方を反射的に見てしまった俺は、サラリーマンと目が合っしまった。 口を大きく開け、半分になった頭と片方だけの目。 俺は、あまりに突然の事で恐怖も何もなくただジッとその目を見つめていた。 首から下がないその頭がゆっくりと喋ったように聞こえた。 「助けて…」 そこで俺の記憶は途切れている。 でも、その日から自殺を目撃する回数が増えてしまった。 人って自殺する時、一瞬の笑うって知ってましたか? そう見えるだけかもしれないが…
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