ある冬のこと、土。

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. 前にあるのは、貴方のお墓。 掘り返すのは、私。 蝶にならないで、飛んでしまわないで。 私に話しかけて、声を聴かせて、目を開けて、笑って、愛して、抱き締めて。 動かない体を抱き上げて首筋に顔を埋める。 明らかに腐っている貴方は異臭を放つ。それでも貴方が崩れない様に抱き締める。 貴方の口に私の口をあてる。光の無い目を見つめる。私の臭いと貴方の臭いが混じる。 一時でいい、私を、狂人でいさせて。 私も腐ってしまいたい。貴方の様に腐ってしまいたい。 ぼろぼろになって貴方と混ざりたい。 貴方の、私の、臭い。 叶わないから、土を掘り返す。 冬、冷たい土を掘り返すのは、私。 貴方に会うために。 .
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