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鏡を抜けた途端、あまりの眩しさにアリスは思わず目を閉じた。
目が光に慣れるに連れて徐々に見えてきた景色にアリスは驚いた。
先まで夜だったはずなのに、空には眩しい太陽が昇り、
目を疑うようなほど美しい庭が目の前に広がっていた。
「すごく綺麗…」
「すばらしいでしょう?ワタクシ自慢の庭園ですのよ」
その声に振り返ると、アリスを此処へと連れてきた女性が黒い日傘を差して噴水の淵に座っていた。
漆黒の装いに反した長く美しい金髪が、傘から漏れる日に当ってキラキラと輝いていて、なんとも綺麗だった。
その姿はこの素晴らしい庭園とも相成って、まさに一枚の絵画。
見とれるアリスに女性はにっこりと笑いかけると、優雅に立ち上がり、
「それでは、ワタクシのチェスのルールをご説明いたしましょう」
そう言って向こうの丘への道を示した。
その指示に従って、アリスが一歩を踏み出した時だった。
「まってぇ~ まってよぉ! アリスぅ 置いてかないでぇ!!」
鈴を転がすような可愛らしい声がアリスを呼び止めた。
しかし、辺りを見ても誰もそれらしい人物は見当たらない。
「やっと追いついたぁ アリスったら歩くの早いんだもん」
今度は足元からその声が聞こえた。
下を見やったアリスは、親友の姿を目にして歓喜の声を上げた。
「ダイナ!!!」
「アリスぅ 疲れちゃったから抱っこしてよぉ」
その要望に答え、アリスは早速ダイナを抱き上げた。
「あたちね、アリスが心配だったから付いてきちゃったの。ごめんなちゃい」
ダイナはゴロゴロと喉を鳴らしてアリスに頬擦りをしてたっぷりと甘えた後、申し訳無さそうに謝った。
「ううん。私を心配してくれてありがとう、ダイナ」
やっぱりあなたは私の親友だわ。
心配してこんなところまで付いてきてくれるなんて…
ダイナの優しさに、アリスは心がとても温かくなった。
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