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「ワタクシのチェスは、どんな駒も一の目からスタート。
けれどもポーンは最初の一手、二目動けるでしょう?アナタにとっては有利ね。
それで一気に三の目まで行くのなら、汽車を使うといいでしょうね」
盤までの下り坂を歩きながら、女王は楽しそうに説明を始めた。
「汽車を降りてからが大変ね。三の目は誰のモノでもないけれど…
四の目はトウィードルダムとトウィードルディーのモノ。
五の目は水のモノ。
六の目はハンプティ・ダンプティのモノ。
七の目は木々たちのモノ。
それらをすべて通過して、八の目まで辿り着ければ、アナタは白のクイーン。
願いを叶えることが出来るわ」
淡々と語る女王の左手には、小さなチェス盤。
女王は黒のナイトをその右手に取ると、白のポーンを一つ盤上から消した。
…私もあんな風に消されてしまうのかしら…
アリスの頭にふとそんな考えが過ぎる。
ダメよアリス!!私は絶対に願いを叶えるんだから!!
その時突然、女王は歩みを止めて、優雅にアリスを振り返った。
「ココを越えれば、チェスの始まりよ」
女王の足元には申し訳程度に流れる水。
「あの。色々と教えていただいて、ありがとうございます」
アリスは丁寧にお辞儀をして、お礼を言った。
「精々、ワタクシを楽しませることね。それじゃ、また逢いましょう」
そう言い残して、黒の女王はアリスの目の前から消えた。
「ねぇアリス… 本当にやるの?」
腕の中に居たダイナが、心配そうにアリスに尋ねる。
「ダイナは待っててもいいんだよ」
「アリスが行くなら あたちも行くよ!」
ダイナはアリスの肩に飛び乗ると、元気よく言った。
「ありがとう、ダイナ。 じゃ…行こうか!!」
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